「背中越しに 愛」
「…で、結局ロンは居残り補習ってわけさ。」
「だからあれ程忠告したのに!」
思わず目を細めてしまうような眩しい昼下がり
曇の隙間から顔を覗かせた太陽は、中庭の若草を初々しく照らし出す。
泉の水面から反射してきた光から逃れようと、ハリーは静かに目を閉じた
背中合わせに座った彼女の声と共に、ゆらゆらと水面の揺れる音が聞こえた気がした。
「そう言えばさ、例のレイブンクローの彼の件はどうしたの?」
「…あぁ、つい先日丁寧にお断りさせて貰ったわ。楽しみにして頂いて申し訳無いけれど!」
「それはそれは。」
暖かく射して来る日差しに意識がまどろみ、僅かに彼女の声が遠くなる。
どうやらしばらく続きそうな彼女の皮肉を聞き流しながら、夢と現実の狭間へ
けれど背中に感じる彼女の熱は掠れるどころか、増すばかり。
彼女も同じくして自分の熱を感じているのだろう
今、背中越しに熱を共有している僕等。
「…そう言えばさぁ」
「あら、また”そう言えば”?」
まるで他愛の無い世間話を切り出すかのような調子。
彼女が流れる若草の如く くすぐったい声で笑い、返した
最早その声はずっと遠く聞こえたけれど
「そう言えば僕、君が好きなんだよね。」
「…え?」
静かに眠りに落ちていく意識、薄れゆく感覚。
浮かんだのは、瞼を下ろす前に見た青空と天使の回廊。
消え行く世界の中で、背中越しの彼女の鼓動が やけに強く残った。
***
お互い何処かで微かに 気付いているのに踏み出せなかった、けれど。
まどろみの中 彼はその壁を蹴破った。
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背中合わせって好きですv
物凄く素敵な素材を見つけたので衝動書き。
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