カチ コチ カチ コチ…。
誰も居ない空間という表現は正しいだろうか?…否。
自分を除いて と足す必要があるな。
暗闇に包まれた部屋の中で見えるのは只一つ、霞んだ月に照らされた自分の指先だけ
普段は騒がしく、温度の高い この部屋で、彼は一人自分のベッドに腰掛け時を待つ。
いつもなら全く耳にする事が無い、その音が室内に乾いて響く
カチ コチ カチ コチ…。
はて、この部屋に こんなに秒針が自己主張する時計があっただろうか。
孤独と言う世界の中で、瞼を閉じ暗闇へと落ちる
すると不思議な事。何も見えない筈のその瞼に、普段は見えない物が見えてくる。
瞼の裏に焼きついた大きな振り子をつけた時計を、ハリーはじっと見つめる。
すっと目を開けたと同時に、室内に鳴り響く実に金属的な音。
また一つの年が終わりを告げ、新たな年へと姿を変えた瞬間──────────────────
「…静かなもんだね。」
自嘲気味に笑い、ひとつ溜息を落とすと、漆黒のローブを身にまとい空へと舞う。
三日月霞む冬の夜
彼は溢した雫を探しに闇夜へ舞った。
異質と呼ばれても致し方ない
寧ろマグルと名付けられた彼等からしてみたら、実に的を得た表現であろう。
そんな奇怪な学校へと進学してからはや5年
今や片手に杖で、高性錠すら瞬き一つ。
全くもって素晴らしい才能を持って生まれたものだ。
そっと窓の淵へと足を掛ける。木材の軋む音に胸が大きく鳴るのを感じ、思わず自分で苦笑い。
持ち主の普段の姿からはとても似つかない可愛い柄のカーテンを静かに開き、掛けた足をゆっくりと室内へ
闇夜の星だけが明かりとなる漆黒の闇の中、一筋の光に照らされた金色のカーテン。
その眩しさに、愛しさに目を細め 纏い主の顔へと そっと近づき囁いた
「A HAPPY NEW YEAR…Hermione.」
その白い肌に触れる事すら叶わない
夜風に冷えたこの手の行き場がわからずに、そっと射しこむ月光をすくいあげた。
溢したものは、この心──────────────────────
想いは確かに目前に
然し心は何処へ落としたか
彼女は遠い意識の中、軋む木材の音を聞いた。
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不法侵入ハリーさん(ぇ)
せっせとリハビリ中…!!
実は,悲恋版Winter dayの練習物でもあります。
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